曺ドクターの健康相談Q&A
赤ちゃんの栄養;母乳とミルク
在日韓国商工会議所 会議所報 「架け橋」第80号 2003年4月30日発行 より
Q
産後一週間の初参婦です。赤ちゃんをこれから健康ですくすく育てるために、母乳のよさとミルクに代える時の注意点などを教えてください。
A
母乳で育つことは動物にとって一番自然なことです。育児は自然が何よりですから、赤ちゃんも母乳で育てることが基本だといえます。でもお母さんの気質や体質などによって母乳が足りない、または出ない場合もあります。そんな時は、くよくよせず、ミルクを上手に生かしましょう。何よりも楽な気持ちで育児をすることがとても大切なことです。まず、母乳の特徴について話してみますと、母乳は赤ちゃんにとって最適な栄養源であることはよく言われております。
妊娠中のお母さんは臍帯で赤ちゃんと結ばれ、多くのウイルス性の病気に対する抗体(免疫)を赤ちゃんへ送り込んでいます。例えば、麻疹(はしか)やインフルエンザの抗体です。
しかし、妊娠中十分でなかったポリオやオヤエコー7型ウイルスへの抗体は初乳に含まれており、初乳を通して送られるのです。また、母乳、特に初乳(出産後一週間くらいの間に出る母乳)には、”濃縮免疫”ともいえる、分泌型免疫グロブリンAが多く含まれていて、母乳を飲んだ赤ちゃんの気管や消化菅の粘膜表面に分布され、感染防止に力を発揮します。このほかにも母乳は多くの感染防止の成分を含んでいるため、母乳栄養で育った赤ちゃんは病気になりにくいと言われているのです。
免疫以外でも、母乳なら、牛乳を与えた時の異種タンパク質によるミルクアレルギーの原因を起こすこともなく、消化吸収がスムーズにゆきます。母乳はお母さんにとてもよい効果を発揮します。赤ちゃんに乳首を吸われる刺激は、間脳下垂体に伝わり、乳汁を生産するプロラクチンを分泌させます。
このホルモンは別名「女性を母にするホルモン」と呼ばれていて、お母さんの精神に作用し、育児への意欲と喜びを実感させてくれる働きがあるのです。母乳栄養が基本であることは言うまでもないと思いますが、しかし母乳が出なかったり足りない状況は常に起こりえることであります。そこから人工栄養の歴史が始まります。赤ちゃんにとってミルクは母乳に代わる栄養源です。可能な限り母乳に近づけるべく研究を重ねて作られていて、赤ちゃんの成長に必要とされる基本的成分がよく配合されています。ミルクの主原料は牛乳です。その牛乳を赤ちゃんの体に負担のかからないように加工し、栄養バランス(蛋白質、脂肪、炭水化物)も考えて、調整されています。ただ、母乳には免疫物質が含まれていますが、これらをより母乳に近く人工的に作ることを韓国の日東製薬Foodisによって試みられております。
世界的な清浄地域ニュージーランドの草地で人口飼料や抗生物質ホルモン剤を投与していない場所で100%放牧した羊から24時間以内に原乳から得られた粉乳です。この粉乳は母乳の成分と類似していると研究されております。
日本の明治製薬、和光堂などは、長い間、製品開発をしており、メーカーによって成分や味が多少違いますが、どのメーカーのものでも赤ちゃんの発育への影響が大きく異なるとは考えられないので、赤ちゃんが好んで飲んでくれるかどうか、便の状態はどうか、価格は納得できるかどうかなどを基準に選ぶといいと思います。
次は、フォローアップミルクについて述べることにします。ヨーロッパでは、伝統的に生後数ヶ月から牛乳を与える習慣がありましたが、赤ちゃんに早く牛乳を与えると、鉄が欠乏して貧血になったり、タンパク質が多すぎて腎臓に負担をかけるという問題が指摘されました。
その欠点を補うために、鉄分やカルシウムなどが多めに配合され、タンパク質も牛乳よりも少なくミルクよりも多いフォローアップミルクが生まれました。成分的にはミルクより牛乳に近いと考えていいでしょう。ミルクは「人工乳」と分類されますが、フォローアップミルクは「食品」と分類され、価格もてごろなのが特徴です。
母乳とミルクの気がかりな疑問はたくさんあると思いますが、次の機会にいたします。