病気の旅客サポート

医師として国際人として

病気の旅客サポート

神戸新聞2002年1月23日付 地球ホームページより

W杯控え態勢強化訴え

「韓国への旅行者がこれだけ増えたのだから、病気や事故時のサポート態勢をもっと整えるべきだ」。医師の石川自然さん(五七)は、韓国を旅行中に病気などにかかり、身動きできなくなった日本人を無事に帰国させる活動を事実上のボランティアで行っている。

韓国を訪れる日本人は年間二百万人以上。サッカーの二〇〇二年ワールドカップ(W杯)を控え、「旅行客の増加とともに万一の事態に巻き込まれる人も増えるはず」と、在韓の日本人会や企業などにも協力を訴えている。

「外国人は健康保険の対象外。韓国で一週間ぐらい入院し、日本円に換算して三百万円近く請求されたお年寄りもいる。経済的負担に加え、言葉も通じず、患者の不安は大きい」と石川さん。「最近は国内旅行と同じ感覚で海外旅行傷害に入らず来る人も目立つ」と注意する。

 石川さんはもともと韓国東北部の江原道生まれの韓国人。日本の昭和医大を卒業しそのまま日本国籍を取得、東京女子医大などで小児科医を務めた。政府奨学金でドイツに留学、米国の大学病院で働いた後、東京で病院も開業したが、数年前から韓国の大学教授を務めるため再び韓国籍に戻った。

 しかし、大学の「派閥争いが嫌になった」と昨年、退官。今はソウル市内に小児病の研究所を自分で設立。

ボランティアは、昨年夏、知人の在韓日本大使館関係者から「七十代の旅行者が倒れて入院した。費用もかさむし、何とか日本に帰れるようにできないか」と頼まれたのがきっかけ。以来、一ヶ月に一、二件の依頼が舞い込み、昨年末も「ソウルで患者」との連絡で東京から駆けつけた。受け取るのは航空運賃など最低限の必要経費だけだ。

 付き添うだけでなく、飛行機搭乗に耐えられるよう韓国側の医師と相談しながら事前の治療をしたり、帰国後の受け入れ先となる病院のベッド確保も不可欠。

 「韓国の救急車には十分な救急器具が備わっていないことが多い」と指摘。日本側が日ごろから独自に、空港まで患者を運ぶ際に必要な酸素吸入器などを準備する必要性を訴える。(ソウル共同)

〜ソウル日本大使館の依頼を受諾し活動〜